恒例

毎年　この鯛の塩焼きを写メってる気がする

うちの家族は元旦にAliceの実家で食べるこの鯛を

それはそれは楽しみにしているからだ

錦で仕入れた鯛を母が焼いてくれる素朴なご馳走

はまぐりのお吸い物と　車海老の塩焼き

勿論　数の子　棒だら　いくらにおなます　たたき牛蒡にくわいお煮しめ

Aliceは　な～んにもしないで　毎年数々の手作りおせちを頂く

そして　何ひとつ伝授してもらってないから

両親が今の様に元気でいられなくなったら

そのすべてはもう食べられなくなるだろう

いいのかなぁ　それで・・

ゆうべもAliceは言った

『毎年同じ事が出来る事　それって一番の幸せなんだよ』

母は大きくうなずいて　『ほんまにそやで』　と言った

昨日の父は

特に　Aliceとダグが叔母とリキを祇園まで送り届けて戻った頃には

すっかり酔いがまわった様子で　口数が増えていた

ただ　酔うとたいてい文句ばかり言う　あまり歓迎されない酒飲みだった父が

ゆうべは　珍しく　ご機嫌で

Aliceがお歳暮に贈った　賀茂鶴を美味い美味いと何度も褒めながら

手土産に持って行ったワインも　すっかり空けてしまって

ちょっと飲み過ぎ感たっぷりに　それでも　今日は楽しかった　ありがとうと

何度も嬉しそうに言う父は

Aliceがいままでに見た事のない姿だったのだ

帰りに車の中でダグが言った

『あんなお父さん珍しいね』　

『うん　Aliceもそう思った』

嬉しそうだった父を見て　何だか不安になるなんて変なんだけど

父が一番喜んでいたのは　お嬢との会話で得た孫の成長感だったようで

今までに感じた事のない喜びに接したせいだろうと思う事にした

幼馴染からの年賀状に　『お互い歳とったなぁ』　って書いてあったけど

自分たちが歳とった分　親も深刻に老いている事を認めざるを得ないわけで

ただ父は言った

『兄弟でまともやったんは俺だけや』

この時　母もAliceも　まともだったのは一番上のお兄さんでしょって・・

でも　５人兄弟のうち　孫の顔を見る事が出来たのは

確かに父だけなので　母の助けがあったればこそだと思うけど

まぁ　５人の中で一番幸せに歳を重ねている人なのかもねって思えた

ゆうべ　『楽しかった　ありがとう』　と何度も口にした父は

きっと急にそんな事を思ったんだね

飲んべいで　何度も虎箱のお世話になった武勇伝など語りながら

結構無茶苦茶生きて来たけど俺にはお前らがいるんだと言ってくれてる様で

嬉しかった

親孝行らしい事　なーんも出来てない後ろめたさの中で

『俺にはお前らがいるんだ』　と　それを嬉しく思ってくれている事を知って

Aliceは　それを喜ぶ事で　言いようのない不安を掻き消した


おじいちゃん　今年もよろしくね＾＾